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​ 支部長挨拶

​ ご挨拶に代えて 

 日本死の臨床研究会北海道支部 支部長 小田浩之

皆さんこんにちは。

 

日本死の臨床研究会北海道支部代表理事(支部長)の小田浩之です。

昨年秋にこのお役目を拝命し、現在は、4月の「春のつどい」にむけて、常任世話人・世話人・事務局の方々と準備を進めています。4月18日には、ぜひ皆様とお会いしたいと思っています。多くの方に会場に足を運んでいただけましたら幸いです。

 

さて今日は、ご挨拶に代えて、私が普段考えていることを少しお話させていただきたいと思います。

私は緩和ケアを専門とする医師ですが、並行して大学で建築の勉強を続けています。人生の最期の時間をどういう場所で過ごすのが良いのか、この観点から、主に緩和ケア病棟の建築計画を調べてきました。緩和ケア病棟は、「治療工場」と揶揄される病院の中で「暮らしの場」となるように工夫されるべき空間です。それはただ広いとか、きれいとか、そういう「見栄え」を良くするだけではありません。

たとえば、緩和ケア病棟にはキッチンを作らなければならないという決まりがあります。

患者さんの病状が進むと、看護師さんは熟達したケアを尽くしますが、一方で、ご家族には「傍にいることしかできない」局面が往々にして起こります。しかしもし、ご家族が患者さんの好物を調理し、患者さんが一口でも「おいしい」と応じることがあれば、そこには医療者には担えない「家族にしかできないこと」が生まれています。ご家族の自己効力感の回復にもつながっているかもしれません。キッチンとは、単に食事を作る場所ではなくて「家族が家族として過ごすための建築的な仕掛けでもある-そんなことを考えながら、私は建築計画の勉強をしているわけです。

英国で生まれ、海外にも広がりを見せるマギーズセンターは、緩和ケア病棟ではなく、がん患者さんやご家族を心理・社会・生活面からサポートする施設ですが、その建築要件1)には興味深い一節があります。

「(施設は)居心地よくしすぎて、人々が経験していることを矮小化してしまってはいけない。…自分が死ぬかもしれないという残酷な可能性と、それが自分と家族にとって何を意味するのかに向き合うことは、ふかふかの椅子や壁の陽気な色だけで解決できるものではない。こうした場所は、人々が直面していることを受け止め、課題の大きさに敬意を払い、そしてそれを支えようとする側もまた、その課題に立ち向かおうとしている、そう見えるべきである」(筆者訳)。

死は隠蔽すべきものではなく、向き合うべきもの-言葉で語るのは簡単ですが、緩和ケア病棟で診療をしているときに、目の前の患者さんと一緒にこの境地に立つことは生易しいことではありません。けれども、緩和ケアに携わる多くの医療者は、まさにこの困難のただ中で、日々懸命に支え続けています。そしてマギーズセンターでは、スタッフの取り組みもさることながら、建築そのものが「向き合う力」を支えるように、たとえば光の入り具合や外の景色の取り入れ方、周りの人との距離感(交流したり一人でいたりする)を自由に選べるような設備配置など、細やかな設計が試みられているのです。

どういう建築計画が患者さんやご家族にとってふさわしい空間をもたらすのか、私は今も学びの途上にあります。そして、患者さんやご家族とどう向き合っていけばいいのか、これについてもこの研究会で、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

日本死の臨床研究会は「人々が死を受け入れ自分らしい人生を全うすること」に貢献すべく、約半世紀にわたって活動してきました。この伝統ある活動を皆様と今後も続けていきたいと思っています。そして年に1度は同じこころざしを持った方々が一堂に会し、仲間がいることを実感するとともに、癒しと、そしていろいろな学びを得ていただければと思います。

4月18日には天使大学で、ぜひお目にかかりましょう。

 

1) Maggie’s Architecture and Landscape Brief.<https://www.maggies.org/media/filer_public/dc/fd/dcfd6b2c-21cd-42fb-87e6-668093b65d1d/architectural_brief_2025.pdf>[Accessed 2026 Feb 28]

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